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ぺるそな
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   久々に写真集を買った。
   鬼海弘雄の「ぺるそな」。

   かつて『王たちの肖像』」、『や・ちまた:王たちの回廊』と、
   同じシリーズで出ていたものの集大成になる。
   オリジナルは大判三色刷りで、土門拳賞などを受賞したことで有名。
   今回その普及版が出たので、買うことができた。

   浅草にやって来る様々な人(王)たちを撮ったポートレートなのだが、
   とにかくそのモデルたちが、すばらしい。
   
   見方を変えると、「フリークスたちの人間図鑑」とも見えてしまうが、
   どっこい、そこには王たちの毅然としたいでたちと、
   その王たちに対する、写真家のやさしさと尊敬の眼差しが、ある。
   
   優れた作家は、主観と客観の両方を持っている。
   冷徹なまでに客観視された創作物の中に
   「愛」という主観がにじみ出ることを、隠し切れない。

   鬼海弘雄の写真には、
   全く人が写っていない「東京迷路」においても、
   それが感じられるから、好きなのだ。

   以前、「情熱大陸」というテレビ番組で、鬼海さんのドキュメントを見たことがある。
   夫婦で公営の団地に住み、プリントの水洗は風呂場でやっていた。
   妙に親近感を覚えたものだが、
   こんな仕事をしていても、食えない現実って一体何だ?
   と、この国の文化さえも考えてしまう、そんな人だった。
 
   鬼海弘雄って人は、
   本当に「人間」が好きなんだな、と思う。

   この写真集から感じるもの、学ぶものは、多い。

by norazin | 2006-01-22 22:30 |


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