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リムカ売りの少女
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   妙にアジアが恋しくなって、唐突にまたインド。

   ゴアのビーチでノヘ~ンとアラビア海を見ていたら
   遠くから頭に籠を載せた少女が砂浜を歩いて来た。
   「リムカ!」
   目の前まで来ると少女は頭の籠を降ろして
   地元製のリムカという清涼飲料水のビンを差し出した。

   暑い日だったのでちょうどいいと1本もらった。
   飲んでいる間少女は砂浜に座って一人砂で遊んでいる。
   ふと籠の中を見ると10本ほどの栓の付いたリムカと数本の空ビンが
   麻袋に氷といっしょに入っていた。
   少女は客が飲み終わるのを待っていた。
   
   僕はカメラを取り出して彼女に撮っていいかと訊いた。
   彼女の顔がパッと明るくなった。
   何も言わないのに自らポーズを取り始める。
   まるでグラビアを飾るモデルにでもなったかのよう。
   彼女は砂上のモデルになった。

   彼女の写真はその場であげることはできなかったので
   僕は成田で撮ったポラロイド写真を渡した。
   彼女は両手でそれを包み込むように持ち
   まじまじと珍しそうに見ては何度も僕の顔を見た。
   
   風で砂が写真にかかると丁寧に拭って払い
   まるで宝物でももらったかのように
   彼女は痩せた素肌の胸に写真を抱いた。
   そのポラロイド写真には僕が写っていた。

   僕はもう1本リムカをもらい
   彼女は笑顔で僕を抱いて帰っていった。
   
   1時間後僕はまだ砂浜でノヘ~ンとアラビア海を見ていた。
   するとまた彼女が頭に籠を載せてやって来た。
   今度は同い年くらいの少年といっしょだった。
   少年も頭に籠を載せていた。
   
   彼女は少年に一言二言何か言い
   少年は僕の目の前にリムカを1本差し出した。
   お腹はもういっぱいだったが
   僕はリムカの栓を抜いた。

   飲んでいる間二人はやはり飲み終わるのを待っていた。
   少女は砂の上に座ってポラロイド写真を片手に砂と遊び
   少年は僕の目の前に立って
   笑顔とも真顔ともいえない顔で僕を見下ろしていた。

   アラビア海に陽が傾いたころ
   リムカ売りの幼いカップルは
   頭に籠を載せ二人ならんで
   砂の上を帰って行った。
   
   僕は水平線に陽が半分沈むまで
   アラビア海を見ていた。

by norazin | 2006-04-23 12:21 | インド


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